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別府市温泉エネルギー事業可能性検討調査事業

本事業の一部は、公益財団法人 日本環境協会より交付された環境省間接補助事業である、平成28年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業)により実施されたものである。

1.事業目的

本事業は、温泉エネルギー利用における別府の課題を踏まえ、市が源泉の現状調査を行い、エネルギー利用可能な源泉に関する情報を整備するとともに、温泉資源の保護に配慮しつつ、市・事業者等の源泉所有者による温泉エネルギーの適正な利用を促進することを目的として実施するものである。

2.源泉の現況調査

現況調査では、温泉台帳等の既存資料を基に源泉の情報について整理を行うとともに、湯山地区、明礬地区、小倉地区、鉄輪地区、竹の内地区、火売地区、堀田地区、南立石地区、乙原地区等を対象に140程度の源泉を抽出し、調査協力の得られた103源泉の蒸気・熱水の湧出量及び温度、pH、塩化物イオン濃度、噴出熱量、利用状況等に関する現地調査を実施した。

調査対象源泉の選定にあたっては、別府市地域の二つの熱源(伽藍岳、鶴見岳)から近い地域の源泉から抽出し、その源泉は標高概ね200m以上のものから選定した。

ピトー管による蒸気流量の測定

ピトー管による蒸気流量の測定

容積法による熱水流量の測定

容積法による熱水流量の測定

2-1 源泉の利用状況

源泉の利用用途の多くは、浴用(自宅用・事業用)及び給湯事業用である。

2-2 全噴出熱量の推計結果

現地調査の結果を基に各源泉の噴出熱量を推計したところ、噴出熱量が大きな源泉は竹の内地区、風呂本地区、火売地区、小倉地区、御幸地区、堀田地区、大字鉄輪地区に多く分布していることが分かった。

2-3 噴出熱量の変化

調査対象源泉の噴出熱量が比較できた45源泉で行ったところ、45源泉の62%にあたる28源泉において噴出熱量が減少したことが分かった。

図1 地区別の噴出熱量

図1 地区別の噴出熱量
(最大値は、各地区で最も熱量が大きい源泉の噴出熱量である。平均値は、調査源泉数が3源泉以上の地区における噴出熱量の平均値である。)

表1 各地区における源泉の噴出熱量

地区 調査
源泉数
噴出熱量(GJ/h)
最小 最大 合計 平均値
小倉 14 0.15 20.41 46.99 3.36
御幸 14 1.43 17.96 113.57 8.11
堀田 9 0.07 16.87 49.26 5.47
竹の内 9 0.25 25.01 122.23 13.58
風呂本 6 1.02 21.91 56.79 9.46
火売 6 0.04 21.37 49.18 8.20
乙原 5 0.12 7.16 8.37 1.67
明礬 4 0.22 9.30 13.34 3.33
観海寺 4 2.00 9.32 23.48 5.87
大字鉄輪 3 10.59 16.29 38.04 12.68
北鉄輪 3 0.23 1.56 2.30 0.77
南立石生目町 3 0.20 3.83 4.63 1.54
湯山 3 0.03 5.94 11.82 3.94
鶴見園町 3 1.13 7.80 15.71 5.24
大字鶴見 2 6.71 10.12 16.83
南立石本町 2 0.08 0.55 0.63
南立石板地町 2 1.69 10.14 11.83
大畑 2 3.88 8.46 12.34
上原町 2 4.48 4.50 8.98
鉄輪上 1 2.09 2.09 2.09
馬場 1 10.04 10.04 10.04
南立石八幡町 1 5.65 5.65 5.65
南立石1区 1 5.40 5.40 5.40
南荘園町 1 4.10 4.10 4.10
大字南立石 1 9.90 9.90 9.90
北中 1 2.94 2.94 2.94

4.利用可能なエネルギー量の推計

現況調査で把握した各源泉の噴出熱量及び利用状況を基に、熱利用及び発電利用の区分で利用可能なエネルギー量を推計した。その利用可能なエネルギー量は、未利用の蒸気・熱水が確認された49源泉のうち、推計可能な47源泉の利用可能量を推計した。推計の結果、利用可能量が大きな源泉は、火売地区、竹の内地区、御幸地区、堀田地区に分布していることが分かった。

5.エネルギー需給状況の把握

源泉の現況調査を行った地区のエネルギー消費量を施設ごとに推計した。推計の結果、施設単体で見た場合、大型の旅館・ホテル、病院のエネルギー使用量が特に大きいものの、調査対象源泉の周辺に位置していないことが分かった。

6.エネルギー需給マップの作成及び温泉エネルギー利用用途の検討

温泉エネルギーの利用用途を検討するため、利用可能なエネルギー量が大きな源泉及びその周辺施設のエネルギー需要量をとりまとめたエネルギー需給マップを作成し、その情報を基に、源泉のエネルギーを有効利用できる利用用途を検討した。

検討の結果、熱利用が見込める源泉の近くには、市営の堀田温泉や介護施設など、大きな熱需要がある施設が存在することが分かった。一方、発電が見込める源泉については、発電設備を設置できる場所や冷却用水の確保が困難であるなど、発電設備導入の実現性が低いことが分かった。

図2 250m×250m区画内の噴出熱量

250m×250m区画内の噴出熱量

7.事業化計画の策定

エネルギー需給マップ及び利用用途の検討結果を踏まえ、堀田温泉への温泉熱利用ヒートポンプの導入に関する具体的な事業内容を検討した。

7-1 設備導入事業概要

温泉熱利用のヒートポンプは、ホテルや病院、入浴施設等、温泉を利用する他の施設でも導入可能性が高く、化石燃料の削減効果が期待される。このため、市民や観光客の利用が多い堀田温泉を想定して設備を導入したときの導入効果について事業化計画を検討した。

7-2 事業性評価

ヒートポンプの導入により、年間13トンの二酸化炭素の削減が可能であることが分かった。また、投資回収年数は、7.9年であることが分かった。
本設備導入による二酸化炭素削減効果は決して大きなものではないが、同様の設備がホテルや病院等の温泉を利用している施設に広まることにより、大きな二酸化炭素削減効果が期待される。本設備導入事業においては経済性が確保されているため事業性が高いと判断された。

用語解説

温泉エネルギー

「温泉」は、温泉法第2条第1項の規定により、地中から湧出する噴気及び温泉水で、摂氏25度以上かつ同法別表の基準以上の物質がいづれか一つでも溶存しているもののことをいう。この「温泉」が持つ熱エネルギーのことを「温泉エネルギー」と呼び、熱利用又は熱利用及び発電に利用しようとするものである。

pH

水素イオン濃度のことで、温泉の性質を表す数字の一つである。pH7を中性とし、それより数字の小さいものを酸性、大きいものをアルカリ性としている。例えば弱アルカリ泉はpH7.5から8.5までの範囲に入るものである。

塩化物イオン濃度

pHと同様に温泉の性質を表す数字の一つである。別府市地域において、塩化物イオン濃度が注目されるのは、別府の温泉が典型的な火山性温泉であり、噴出する熱水にマグマから供給される塩化物イオンが含まれ、この濃度変化がマグマからの熱・物質の供給の安定性を推測する一つの指標となるからである。

噴出熱量

噴出する蒸気又は熱水が持つ熱量のこと。蒸気及び熱水の測定温度における単位質量あたりの熱量に噴出する蒸気又は熱水の量を乗じて算出する。

ピトー管

流体の流れの速さ(=圧力)を測定する計測器のこと。発明者であるアンリ・ピトーに由来する。

容積法

熱水の噴出量の測定において、あらかじめ容積が判明している容器が熱水により満水になるまでの時間を測定することで流量を算出する方法。

ヒートポンプ

気体に圧力がかかると温度が上がり、圧力を緩めると温度が下がるという原理(ボイル・シャルルの法則)を利用し、大気中、地中等から熱を得る装置。冷房等に応用される。

お問い合わせ

生活環境課 環境企画係

〒874-8511 別府市上野口町1番15号 (市庁舎3F)

電話:0977-21-1134

Eメール:env-le@city.beppu.lg.jp

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